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column.4 がんの治療 三大療法

外科療法

がんの病巣を切り取る治療が外科療法で、一般的に言われる手術療法です。血液を除くほとんどのがんに対して行われ、原則としてがんの主病巣と所属のリンパ節を取り去ります。がんの根治的療法として行われてきたもので、最近では、医療機器の発達に伴い、患者に負担の少ない内視鏡下の手術などが進歩しています。

一方で、外科療法を施すことでがん細胞が急速に増殖し、またがんが転移するリスクもあります。また、腫瘍部位を切除することによって生体機能が損なわれたり、術後障害など患者のQOL(生活の質)の面でマイナスになる可能性もあります。外科療法においては、手術そのものに耐えられる体力も必要となりますので、高齢者や長い治療生活で体力が低下している患者の場合、手術そのものを受けることが難しくなります。

拡大根治手術

外科療法では、がんを取り切ることを目指して行われるわけですが、がんの進行度が高い場合、がんの周辺部分にがん細胞が広がっている可能性が高いため、がんの病巣、浸潤している隣接臓器、転移の可能性のある周辺のリンパ節を広く切り取り完治を目指す手術が行われています。これが、拡大根治手術です。

縮小手術

拡大根治手術とは逆に、切除する範囲を出来るだけ最小限にとどめ、体に与えるダメージ・負担を軽くするのが縮小手術です。早期がんで、比較的病巣が小さい場合に行われます。例えば、肺がんの手術は30年代に肺を全部切り取る肺摘除術から始まり、60年代に肺葉切除が考案され、70年代にはこれが標準手術となりました。最近では、さらに狭い単位で切除する区域切除、もっと小さく切除する部分切除が多く行われるようになり、研究が進んでいます。

機能温存手術

臓器のもっている機能をできるだけ温存させて、術後に患者がQOLの高い生活が送れるように手術を行う手法です。例えば胃癌の場合、切除範囲を少なくして、胃の出口である幽門部を残すことや、胃の周りの神経を温存することで、手術後の体重減少を抑え、ダンピング症状や消化液の逆流を減らすこと目指した手術が行われます。

内視鏡手術

内視鏡を体内に挿入することによって内部の映像を手元でモニターしながら行う手術です。伝統的な開腹手術では、少なくとも20cm程度切開する必要がありましたが、内視鏡手術では、5~6㎝の切開と3~4個の穴で済みますので、傷が小さいのはもちろん、術後の傷の痛みが少なく回復が早いため、患者の負担が小さいのが特徴です。消化器系の手術の他に、脳神経外科、胸部外科、整形外科、耳鼻科、泌尿器科でも広く行われています。

EMR

EMRは、内視鏡的粘膜切除術(Endoscopic Mucosal Resection)で内視鏡的で粘膜をむしりとる手技で、消化管の腫瘍性病変の治療に主に用いられます。現在、種々のEMRの手技が開発されていますが、ワイヤを引っ掛ける際に、内視鏡の穴を通した把持鉗子(はじかんし)で切除部位を引っ張る方法と、内視鏡の先端で切除部位を吸引する方法に分けられます。

腹腔鏡手術

腹腔鏡手術はお腹の中に気体(二酸化炭素)を満たして、腹腔鏡という内視鏡の一種でお腹の中をのぞきながら、小さな穴から特殊な器具を入れてがんを切除する方法です。この方法では、お腹に小さな傷が残るだけで痛みや身体への影響が少なくなります。

放射線療法

がんの放射線療法は、x線やγ(ガンマ)線、また粒子線といった放射線をがんに照射し、がん細胞を死滅させる療法です。正常な細胞も放射線によって損傷を受けますが、これを出来るだけ少なくし、がん細胞だけに最大の効果を発揮できるように照射法を工夫して治療するのが放射線療法です。がんの主要な局所療法の一つですが、外科療法のように患部を切除しないため、体の機能や形態を温存させたい場合、例えば、舌癌、喉頭癌、乳癌、陰茎癌などの早期がんで行われます。また、悪性リンパ腫のように手術よりも放射線療法のほうが効果を得られるとされている場合、脳幹部の脳腫瘍のように手術の不可能な部位にある癌の場合に行われます。

ガンマナイフ療法

ガンマナイフは、脳内の病巣部に201個の細かいガンマ(γ)線ビームを集中照射させる放射線治療です。開頭手術をせずに病巣をナイフで切り取るように治療できることからこう呼ばれており、周辺の組織をできる限り痛めない治療です。ガンマーナイフ療法は、頭蓋骨内の病巣に対応できますが、金属製枠で頭蓋骨に穴をあけネジ固定するため患者の出血や痛みを伴います。

サイバーナイフ療法

サイバーナイフは、病巣部にエックス(x)線を集中照射して治療を行う放射線治療です。また、その照射をロボットが行うことがガンマナイフと異なります。放射線を出す装置は工業用のアームに取り付けられていて、患者が多少動いてもロボットがその位置をキャッチし、病巣部に正確に放射線を当てることができます。そのため、ガンマナイフのように固定具でがっちりと身体を固定しなくても治療が可能で、また治療できる範囲も、ガンマナイフのように頭だけでなく首の部分まで広がっており、今後は全身の病変にも応用されると言われています。

ほう素中性子捕捉療法

原子炉等から発生する中性子とそれに増感効果のあるほう素との反応を利用して、正常細胞に損傷を与えず、がん細胞のみを選択的に破壊する治療法です。ほう素化合物をあらかじめ投与しておき、がんにほう素が集まったときに熱中性子線を照射すると、ほう素を多く取り込んだがん細胞だけが死滅するというものです。がん細胞と正常細胞が混在している悪性度の高い脳腫瘍をはじめとするがんに特に効果的で、患者のQOLの維持に優れています。

陽子線治療・重粒子線治療(粒子線治療)

エックス線やガンマ線は電子の粒子からなる電磁波で放射線の一種ですが、電子よりも重い陽子や炭素などを加速したものが陽子線および重粒子線です。これらの放射線を用いてがん治療を行うのが、粒子線治療です。

X線やγ線を使った治療では、身体表面近くで最も線量が強く、深く進むにつれて減弱しますが、陽子線や重粒子線の場合は、照射するときのエネルギーによってある深さに大量の線量を与え、その前後に与える線量は少なくできますので、正常組織の障害を少なくすることができます。つまり、粒子線治療では、がんに対する治療効果がより大きく、かつがんに集中的に照射することができるという優れた特徴があります。

MRガイド下集束超音波手術

虫眼鏡の原理を医療に応用した集束超音波装置を利用し、超音波のエネルギーを一点に集中させて、直接患部の腫瘍等を焼却する療法です。MRIの画像を見ながら直接身体のなかの患部に超音波を集点するため、身体の表面などに傷をつけることなく治療をおこなうことができます。

化学療法

化学療法は、文字通り化学物質である抗がん剤を用いてがん細胞の分裂を抑え、がん細胞を死滅させる治療法です。外科療法と放射線療法は局所的な治療には非常に高い効果を発揮しますが、抗がん剤は、静脈に注射するか内服することにより、血液を通して全身に運ばれるため、全身的な治療に効果があります。外科療法や放射線療法の前後に、全身に転移している可能性のある場合等、その病巣を根絶して治癒力を向上させるために用いられます。また、最初から全身的に発病する白血病等のがんにも使用されます。

多剤併用療法

多種類の抗がん剤を組み合わせて使う併用療法です。互いの抗がん作用を相乗的に増強し、個々の薬剤が持つ副作用を分散させることができるので、単独で投与するよりも効果的な場合が多いです。

支持療法

支持治療は、がんに伴う痛みなどの症状緩和、がん治療による副作用の軽減を目的とする医療です。根治が主目的の「積極的治療」(手術、化学療法、放射線治療)に対応して使われます。患者の話に耳を傾け、共感して受け入れる態度で精神的に支え、自然治癒力によって精神疾患を治療する心理療法です。病院での実施のほか、患者に自信を取り戻させるために家庭や職場などにはたらきかけて、患者のまわりの環境を調整することもあります。

メトロノミック・ケモテラピー

ヒトの最大耐用量より少ない低用量の抗がん剤を、メトロノームのように規則的な一定の頻度で持続投与する治療法です。従来は、抗がん剤を大量投与して3週間休薬するという方法を繰り返す治療法が一般的ですが、この療法は、休薬期間にがん細胞の増殖を抑制する点で優れています。

休眠療法

抗がん剤の副作用で患者の体力の消耗や免疫力低下を起こさないよう、低容量の抗がん剤を長期間にわたって投与する方法です。患者の負担も少なく、また、患者の体内にある免疫力を殺さずにがんと戦うことができます。

書籍のご案内

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WIKOM研究所
定価(本体1,600円+税)

がんにならないように、
生活習慣病にならないように。
がん治療に携わる医師がおすすめする、からだが喜ぶ、おいしいごはん。

『がんに負けないからだをつくる』

和田洋巳 著
春秋社 定価1,680円(税込)

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『フィット・フォー・ライフ』

ハーヴィー・ダイアモンド
マリリン・ダイアモンド 著
松田麻美子 訳
グスコー出版 定価2,205円(税込)

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『葬られた「第二のマクガバン報告」』上・中・下

T・コリン・キャンベル
トーマス・M・キャンベル 著
松田麻美子 訳
グスコー出版 各巻とも
定価1,890円(税込)

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